若い頃、博報堂という広告代理店に勤務してるカイちゃんという50過ぎのおぢさんに遊んでもらってた。カップヌードルのCMとか創ってたらしい。ハングリー?ってやつ。なんか気に入られてて呑みに行ったり馬券買いに行ったり半年くらい毎週のように遊んでもらってた。ある時いろんな業界の方が集まるイベントがあってクラブみたいなところに連れてってもらった。そこでスーツ姿で騒いでる若者集団が居て「お前あいつらのところに行って『仕事なんですか?』って聞いてこい」と言われた。そして「もし会社名だけ言われたら『それなんですか?』って聞け」と。僕はその集団のところに行き「すみません、お仕事は何されてるんですか?」と聞いた。そしたらその若者の集団は

「電通」

とだけ答えた。僕はカイちゃんの言いつけを守って「電通ってなんですか?」と聞いた。その若者の集団は「お前電通も知らねえの?」「馬鹿じゃねぇの?」みたいなことを代わる代わる言ってた。しばらくしてその場にカイちゃんが来て「俺の連れが何か失礼でも?」とか言ったらその若者達は「あ、〇〇さんのお知り合いの方でしたか…」みたいな感じで大人しくなってどっかに行っちゃった。その後行った呑み屋で「仕事を聞かれて会社名しか言えないようなつまんない人間にはなるなよ」「本当に自分の仕事に自信があったらサラリーマンだろうと公務員だろうとアーティストだろうとフリーだろうと仕事の内容を含めて言うもんだ」とカイちゃんに言われた。有名な会社に入ることがゴールでどうするんだ、これから何十年も働かなきゃいけないのに、どうせあいつらはコネだけどな、みたいなことも言ってた気がする。

カイちゃんがすごかったのは「カイ」ってのは偽名だったこと。偽名なのはもちろん僕は知ってたんだけど、呑み屋とか知り合いの芸能人とかにも「カイ」で通してたこと。博報堂で働いていることは周りも知っていたとは思うんだけど、本名を知られてないから会社に電話来て「カイちゃん居ます?」と言ってもそんな人は会社に居ませんって言われるだけだから楽なんだよって笑ってた。名字は本当のを名乗ってたんだけど会社に同じ苗字が3人居るから安心だとも。
最後に呑みに行った時に本名の博報堂の名刺をもらい「もしお前が本当に困ったら電話してこい」って言われたのは良い思い出。

その後、特に困らなかったから1回も電話しなかったし、僕も引越しとかして連絡先変わっちゃったから連絡取れなくなっちゃったんだけど、何年も前に亡くなったと聞いた。携帯が無い時代だったから気軽に連絡も取れなかったのが悔やまれる。

なんか電通が話題になってたから思い出した話でした。僕の中では昔から良いイメージは全く無いよと。

あれから何十年か経つけどカイちゃんに言われた通り初対面で仕事を聞いて会社名しか言わなかった人間で仕事出来る人間は見たことがないよ。


というわけでカップヌードルのCMに使われてた曲で印象深い「そして僕はまた途方に暮れる」を貼って終わりにします。自分の中では「カップヌードル3大CM曲」と定義づけてる残りの2曲「ff」と「翼の折れたエンジェル」も捨てがたいですが。。。探してたらCMをまとめた動画を見つけたのでそれ貼っておきます。良いCMだなぁ。。。 このCMにカイちゃんが関わってるかは謎だけど(笑